Carcassonne: The Official Board Game

Carcassonne: The Official Board Game

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机上の空論的戦略ガイド
By Tama
カルカソンヌの戦略についての覚え書き。出発点はほとんどただの思いつきに近い自分の思考(仮定含む)を記録するためのものなので人に読んでもらうような形になっている保証はありません。筆者自身がたぶん中級の入り口程度の腕なので、自分で考えているこれらの思考法通りに打てているとは言えず、実戦での検証も不足しています。

考え方というか、抽象的な描写が多いです。具体的なタイル配置ごとのテクニックの例示などについては、直接カルカソンヌの戦術に触れているサイトなどがいくらでもあるのでそれほど扱っていません。それよりも、汎用性が高く、理系的に明確な根拠のある判断基準を、文系でも理解できるように書くことを理想としています。

草原ありのクラシックルール(拡張無し)、二人戦を想定しています。
   
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はじめに
前書き

私は2018年の暮れにカルカソンヌに出会い、当作品は900本の私のSteamライブラリの中でそれまで考えていた自分のお気に入りベストテン作品を軒並みゴボウ抜きし、上位に食い込みました。(簡単に言うとゲーム性に感動しました)

このような素晴らしいゲームであるカルカソンヌに対し、何かコミュニティへの貢献がしたいと考え、このガイドを執筆するに至りました。

当作品は私のいままで触れてきたポピュラーな対戦ボードゲームの中でも、考え方の面で特に「囲碁」「麻雀」と共通する部分が多く、一手を決定するにあたっての判断基準については充分に私の培ってきた知識や考え方が応用できると考え、ゲームを横断する形になりますがそれらの知識をこのガイドに活かすつもりです。

他のカルカソンヌ戦術解説で言われている判断(例えば「詰みを逃れる為の防御になるタイル配置は、最も優先順位の高い手になることがほとんど」など)について、その根拠を定量的・数値的に明らかにする…とまでは行けなくても、このガイドを読んでくれたプレイヤーがある程度定量的な判断基準を確立する助けになればと思っております。

特に「一手の価値」の項目には力を入れており、勝負中に現れる各種戦術を定量的に評価する方法について例を挙げつつ説明しています。例えばざっとネットを見渡した限りでは「相手の一手を無効にする」ことの重要性には触れていても、具体的にそれが何点程度の価値なのかということにまで踏み込んでいる記述は発見できなかったので、今まであまり考えた人がいなかったか、体感はしていても定量化・明文化まではされていなかった視点なのではと密かに思ってます。

章立て的に順序が前後するようですが、打ち方の簡潔な方針は当ガイドの最後「具体的にどう打つか」の項にまとめてありますので、難しいことは抜きにどう打ったら良いか知りたいという向きは、各章は斜め読みにしてそちらだけ読んでいただいても結構です。

アナログボードゲームというニッチ(失礼)な市場では不動の地位を獲得しながら、Steam内、ことに日本のSteamコミュニティにおいては全くと言っていいほど人気・動きのないカルカソンヌの現状を少しでも動かす蟻の一穴になってくれればと思います。

カルカソンヌ歴の浅い身ゆえ、筆致の至らない点が多いと思います。そもそも戦略・方針については「こういう風に考えて打つと強いのではないか」と私が予想している、言ってしまえば仮説にすぎないものであって、私自身が自分の考えている戦略を徹底して実行できていないので、実戦での検証も(勝利の)実績も不足しています。もっとシンプルな考え方や強い打ち方は恐らくいくらでもあるとも思います。よって、当ガイドは「こう打てば勝てる!」といったものではないとご理解いただき、あなた自身による検証と調整によって、最も強いと思える戦略戦術を見つけるための叩き台としていただければ幸いです。

そして統計についての理解も浅いので、各種の計算や算出方法についても間違っていたり踏み込みが浅い可能性が多々あります。もし明らかな誤りに関して数学ガチ勢の方からご指摘が御座いましたら、なるべく優しく教えていただけると嬉しいです。

その点を何卒ご容赦の上、他のブログ記事や戦術評価などとも併せてご判断のうえでご活用ください。

参考文献

当ガイドを執筆するにあたり、過去に読んだ以下の本がとても役に立ちました。

点数計算・形勢判断・一手の価値といった考え方について
囲碁書籍「王銘エン著 ヨセ・絶対計算[amzn.to]

期待値計算・データの取り方と利用法などの数学・統計知識について
麻雀書籍「とつげき東北著 科学する麻雀[amzn.to]
基本ルール
ルールとタイル構成については日本語ルールブック[www.mobius-games.co.jp]を読みましょう。(まるなげ)

タイル構成ですが、私はカルカソンヌ購入直後「こんなん覚えるのマジキチでしょwレクリエーションで遊ぶだけだから別にいいよ覚えなくて」と思ってましたが結局10時間くらいプレイした段階で勝ちたい欲がまさり、ルールブックのタイル一覧とにらめっこして、以後はタイルリスト機能を切って「あれは全部で何枚だっけ?」と思ったら都度ルールブックで確認するとかをしながら、プレイ時間が20時間超える頃にはいつの間にか覚えてました。強くなりたいと思う仮定で自然と覚える意欲も湧くし、一旦覚えると決めてしまえば実際はそう難しいことでもないので、気楽に構えておいて大丈夫です。
当ガイドの頻出用語
  • ミープル
    各プレイヤーに与えられるコマのこと。ゲーム開始時に7個持っている。タイル設置時に地形に配置し、地形を完成させることで回収、スコアが加算される。「各地形はミープルが置かれることではじめて点数になる」以下の地形タイルの説明で「完成時に○点」というのはすべてミープルが置かれている時の話です。(基本的なことながら非常に重要)


  • 道タイルのこと。交差点や三辺都市に繋がる形が終点となり、両端が終点になるか、環状になると完成し1タイル1点となる。未完成な場合もゲーム終了時にスコアがカウントされる


  • 街タイル。完成した場合1タイル2点、ゲーム終了時に未完成なら1タイル1点。紋章付きは2タイル分の点数(完成4点、未完2点)。また、ゲーム名の由来であるフランスの「カルカソンヌ」が城塞都市で有名なことから「城」あるいは「都市」とも呼ぶ。このガイドでは「街」か「都市」と呼びます。完成ボーナスによって高い点数効率を出せるため、カルカソンヌの華となる地形

  • 修道院
    修道院タイル。道付き2枚と道なし4枚の2種がある。周りの8マスにタイルが埋まった時点で完成し1マス1点、自身のタイルも含めて9点が入る。未完成でもゲーム終了時に1マス1点が入る

  • 草原
    ミープルを配置することで、ゲーム終了時にその草原に面していてかつ完成している都市の数×3点を得られる。草原に配置したミープルは寝かせる形で置くので、「寝かせる」「昼寝」などと呼ぶ。他の地形と違い、草原に寝かせたミープルは回収できない。人によって草原ルールはとっつきにくいと感じる人もおり、草原ルールオフで遊ぶことも可能。当ガイドでは草原ありを前提に解説しています。詳しくはルールブックを読んでください

  • 妨害
    相手のミープルのいる地形の開口部(未完成部分)の周りにタイルを配置することで、そこに置けるタイルを制限する戦術

  • 破壊
    「妨害」の延長。開口部に入るタイルが存在しない、あるいは残っていない形に周りを固めてしまい、地形の完成を不可能にする。その地形のミープルはゲーム終了まで回収できないことになる。回収不能になったミープルは「詰み」「殺された」「死んだ」などと言う

  • あいのり
    相手のミープルの居る地形に、自分のミープルがいる地形を繋げること。一旦離れたところにミープルを置き、その後地形を接続する必要がある。完成時またはゲーム終了時に、その地形に置かれたお互いのミープルの数が同じなら、同じ点数が加算される

  • 乗っ取り
    「あいのり」の延長で、ミープルの数に差がある時、少ない方には点数が入らない。この時に最初に地形にミープルを配置していた側から見て「乗っ取られた」と言う

  • 期待値
    地形(主に街)完成時に得られる予定のスコアに、その地形が完成する確率をかけることで算出する。ゲーム終了時に得られる実際のスコア(未完成点)とは近い値だが若干異なる。スコア期待値がすなわちその地形の、その時点での価値であると考えられる。例:完成する確率が50%の10点都市なら、期待値は5点
    また、「あいのり」などの場合も同様に計算できる。例:相手の18点草原に成功率が50%のあいのりを仕掛ける場合、その手は期待値9点の手
    期待値を計算することで、前述の草原の例など「成功したら何点だが、失敗すれば無意味」といった手と地形を完成させるような手の大きさ、優先度を比較する共通単位になります
    詳しくは「一手の価値」項で
プレイにあたって理解しておくべき考え方
1. まず打つ

カルカソンヌは右脳(図形認識)・左脳(計算)を両方使うゲームです。この手のゲームになんでも言えることは、打たないと強くなれないということです。いくら机上で戦術・テクニックについて勉強しても、人間の脳はそれをいきなり使いこなせるほど器用ではありません。実戦でそれを活かすには、実戦を反復することによって脳の回路を慣らしてやる必要があります。

初心者であればなおのことで、ごくシンプルとはいえ実際打ってみなければルールの把握さえままならないことでしょう。「わかりゃあ簡単なことなんだろうけどゲーム(作中ではギャンブル)のルールってのは紙に書かれてるのを読んでも全然ピンとこねぇな」と森田(銀と金[amzn.to])も言っています。幸い、カルカソンヌは初心者にも優しく面白いゲームなので、強くなるために実戦を重ねることは、それほど苦にはならないかと思います。


2. 自分の得点を増やすことは、相手の得点を減らすことと同価値である

「勝敗がスコアで決定される」「お互いの打つ手が、お互いのスコアに影響する」カルカソンヌや囲碁のようなスコアゲームにおいては、スコアの増減の価値は相対的に判断することが重要です。例えば、相手にスコアを与える手であっても同時に自分の得られる代償がそれよりも大きい手であれば、プラスの価値があるということになります。

カルカソンヌにおいては、相手の道・都市・草原にミープルを繋げて同じ得点を得る「あいのり」や、地形の完成を阻止する「妨害」「破壊」というテクニックにおいて非常に大事になる考え方かと思います。たとえば自分のミープルのいる地形を完成させるよりも相手の大きい都市の完成を妨害する手の方が優先されるといった場面が多くあります。

囲碁では手の優先度を「大きさ」で判断しますがカルカソンヌにも応用のきく考え方です。具体的な計算の指標については「一手の価値」の項目で詳述します。


3. リードしてる時は欲張らない

カルカソンヌはプレイヤーが交互に打つゲームです。タイルが公平に配られる仮想の盤面で、お互いが最善手を打つ場合を想定した時は点差が付かないということになります(初期タイルを除いて71枚のタイルを交互に引き合い、先手が最後の1枚を置くというのは先手が1手多く打てるため、厳密には先手が少しだけ有利なのでは?と密かに筆者は考えていますが)。リードされている状況から逆転するには、好ツモという幸運か、相手のミスが必要になるわけです。未完成の地形からもゲーム終了時に点数が入るというルール上、囲碁のように大石が死んで一発逆転などの状況も起きにくいです。

要するに、リードのアドバンテージが大きく、狙って逆転というのはなかなか難しいです。自分がリードしている場合は、盤面を細かく使って運の左右する要素を減らす(大量得点源となる大都市などをそもそも作らない、作らせないといった)打ち回しが有効かと思います。

逆にリードされてる時は、多少のリスクを取っても大きくなる可能性のある手、「運良く相手よりも先にあのタイルを引ければ逆転できる」という状況作りが必要になってくると思います。具体的には得点の高い肥大化させた大都市や草原の乗っ取りなどです。これらの手段を講じると泥仕合化することが多々ありますが、負けてる状況を逆転するには戦局を難しくし、インフレさせた点数を勝ち取る必要があるわけです。

なお、実際にはどちらがリードしているのかという形勢判断には、既得点として確認できる現在のスコア以外に盤上の状態やお互いのミープルの状況も合わせて考える必要があります。「形勢判断」の項目にて詳述します。


4. 強くなるための思考

常に盤全体を見る。部分的な攻防や固まった思考に拘りすぎない。その小さい街を奪い合ったり、9点の草原の支配権を争うより、もっとやれることがあるかもしれない。盤面が広くなってきたら、1手ごとにちゃんとズームアウトして大きい場所を探しましょう。ほんと囲碁みたいだなぁ。

相手が自分の考えにない手を打った時は、その意図をよく考えること。危険な狙いが事前に発見できるかもしれない。それがどう考えても明らかにおかしい(損な)手なら、「自分ならどう打ったか」(もっといい手があったのでは)を考える。

上記とは矛盾するようだが、対局中は自分の過去の手を後悔して(ああ打っておけば…なんて)無駄に時間を使わないこと。打ってしまった手は戻せない。今打てる一番いい手を考えるほうが良い。反省は終わってからいくらでもやりましょう(棋譜取り、録画してるとあとから見直せるので良いですね)


5. タイルを数える時は見落しがないようしっかりと

せっかくタイル構成を覚えても、肝心の盤面チェックの時にタイルを見落して数え間違えてはなんにもなりません。(自戒)

「あのタイルはあと1枚残っているから50%の確率でいつかは引ける」と期待するのと、それが見落しで残り0枚なのでは大違いですし、当然局面の判断を誤ります。経験から言って、この数え間違いから来る判断ミスは負けに直結します。

「期待するタイルが0枚だとわかっていれば諦めて他の手段を模索したものを、数え間違いのせいで有りもしない残り1枚を自分か相手が引くのを待ち続けてそのまま終局、『なんで!?あのタイルどこいっちゃったの!?』となった」事案は一度や二度ではありません…
ミープルを大事に ミープル一体の価値は?
スコアを得るにはミープルが必要

↑何当たり前のこと書いてんだって感じですね。

カルカソンヌは「地形を作って点数を得る」ゲームなので、プレイヤーは「タイルを並べることで点数を得ている」と考えてしまいがちなように思いますし、それはある意味間違ってはいません。ですが、実際に点数が入るのは「ミープルを配置した時※」です。私もプレイ3日めくらいまでこの点をしっかり認識していませんでしたし、オンラインマッチで当たる相手で強くない人は、プレイスタイルを見るとことごとくこの勘違いに陥っているものと思われます。

※ゲームの進行上スコアが加算されるのはミープルを「回収」した時ですが、ゲーム終了時に未回収のミープルからも点数が加算されるルールから言えば、実際に点数が発生しているのは、「配置した時」であり、都市タイルのみミープルを回収する(完成させる)ことでスコアが二倍になるボーナスがある、と認識するのが妥当と考えます。「タイルを並べることでスコアを得ている」と考えられるのは、自分のミープルが既に配置されている地形を拡張した場合と、相手の地形(特に都市)を「破壊」した時だけです。

大事なことだと思うので二回書きますが「得点源はタイル(地形)ではなくミープル」なのです。

この点をしっかり脳筋に叩き込んでおくと、カルカソンヌは「いかに無駄なくミープルを配置し、安全に回収するか(同時に、いかに相手にそれをさせないか)」ということに集約される、すなわちミープルマネジメントの要素が強いゲームであるように思います。


ミープル一体の価値 / ミープルを一回配置するごとに期待すべき得点値

以下は私が自分の実戦から雑に取ったデータを元に計算したものですが、1回の対局で得られる得点の平均値は100点前後です。(結果の勝利・敗北を問わない)
7体のミープルで100点を取っているわけですから、ミープル1体あたりの得点ノルマは14点強と計算されます。

また、1局の間に、ミープルを配置する回数は、平均16.5回程度です。つまり、1度のミープルの配置によって、100/16.5=6点前後の得点を回収時には期待することになります。実際には、2点の道を取ることもあれば、30点の街を完成させる場合もあり、一回一回の点数のバラつきはもちろんありますが、ミープル1体を回収するにあたり6点に届かない時は得点効率が悪い、超える場合は得点効率が良いとざっくり考えてもいいでしょう。(厳密に言えば、回収にかかった手数も関係します。詳しくは「一手の価値」の項で)

ミープル1体の価値は序盤に一番大きく、終盤に近づくにつれて小さくなっていきます(局面が進むごとに課せられたノルマを少しずつ稼いでいると考えられるため)。特に重要なことはミープルを回収できなくなる影響は序盤ほど大きいということです。「一手の価値」の項とも関連しますが、いわゆる「詰み」配置(ミープルを回収できない形)によってミープルを殺す・殺されることは、序盤であれば1体あたり14点以上(それが都市タイルであれば、プラス完成時に得る点数の半分)もの価値を持つ手になると考えられます。

また、ミープルを草原に寝かせたり、「詰み」によって行動できるミープルが減った場合、残ったミープルの1体あたりの価値(重要性)は上がると考えられます。(もともと社員7人の会社の1人が辞めた状況で、残った6人で同じ仕事量をこなさなければ、すなわち勝てないということです)

厳密に言うとこれは回収不能でないミープルに関しても同様で、ミープルは場に出ている以上は回収不能になるリスクが常に存在しており、そのリスクの分だけミープルの価値は上がります。感覚的には「今ミープルいっぱいいるからある程度気軽に置いても大丈夫だな」とか「手持ち少なくなってきたから一旦回収に専念しよう」といった判断として現れるので、ある程度慣れたプレイヤーならば無意識にやっていることと思います。

局面の進み具合を見て、今ミープル1体がどれくらいの価値を持っていそうかということをざっくりでも把握できれば、後述の草原ミープルを置くタイミングなどもある程度適切にはかることができるのではないかと思います。


判断の例

以上の点だけでも、例えば「あいのり」を仕掛けるタイミングについての指標を導くことができます。ミープル1体あたり6点を超える得点は効率が良く、相手に効率の良い点のとり方をさせるのは得策ではありませんね。「プレイにあたって理解しておくべき考え方」の項目で述べたように、相手が効率の良い得点をあげるのを妨害するのは、自分が同じ得点を得るのと同じ価値を持ちます。

そこで、残っているタイル種別と枚数を把握していれば、合流に必要なタイルを引く確率から「あいのり」の成功率と点数期待値を計算することができます。開口部のタイル状況にもよりますが序盤で多くのタイルが残っている状況であれば、成功率は50%以上はあると考えて、相手の都市が既にタイル4枚程度であれば仕掛けるに適切なタイミングではないかと考えます。

相手の都市が既に5タイル分程度以上に大きく、開口部のタイル配置によって「合流」か「破壊」の二択しか選べないような形にできる場合は、良くて得点相殺、悪くてもこちらはミープル1体で相手の完成ボーナス+ミープル1体を殺せるので積極的に仕掛けて良いと考えます。そうじゃない状況で「あいのり」を仕掛けた場合も、後から周りのタイルを埋めることでそのような形に開口部を限定していくという打ち方が考えられます。(あまり手数がかかるようだといけませんが)

「あいのり」に成功するか、相手が妥協して同得点を得る結果になれば相手の高得点を無効化したことになり万々歳ですし、更にミープルを増やして来た場合も相手は2体のミープルを投入しているわけですから1体あたりの点効率は落ちています。相手の方がその街に投入しているミープルが多い時は、その分盤上の他の場所ではアドバンテージを得ているとも考えられるので、そのまま放置して自分は他で稼ぐのを狙っても良いですし、都市の点数期待値が膨れ上がっている時はさらに追加のミープルを投入しても良いと思います。

注意する点としては、あいのりを仕掛けるターンでは街タイルを合流する形では置けないため、最短で決まるとしても必ず相手のターンを挟むという点です。なので、残りのターンが少なく合流できる確率が薄くなる終盤戦(あるいは中盤でも必要タイルが既に少ない時)や、周りに既にいくつかタイルがあって、合流する予定のタイルの場所を相手が簡単に「破壊」できそうな配置の場合は、局面の進行によってミープルの価値が下がっているとしても期待値が極端に下がります。

無論、リードされている終盤で他に逆転の手がない場合は無理矢理あいのりや乗っ取りをしかけていくしかない局面や、自分の方が残ミープル数が少ない(ミープル一体の価値が高い)ので軽々にいけないという状況もありますが、進行が「平和」な盤面に置いてはシンプルに上記の考え方が通用すると思います。

※私の取ったデータはそもそもが上級者のプレイではなく、サンプルも少ないので判断の結論となる数字(例えば、ミープル1回配置が6点という基準や、タイル4枚から「あいのり」をしかけるといった)には改善の余地がありますが「統計データからどう判断基準を作るか」という指標として紹介しました。


遊兵を作らず、かつ待機要員は確保しておく

上述のようにミープル1体あたりの価値は、序盤が一番大きく、終盤に近づくにつれて小さくなっていくことがわかっていただけたと思います。
また、ミープルを置けるのは1ターンに1体、その時置いたタイルのみ。そしてもちろん、ミープルが手元に残っていなければ置くことができません。故に、最大限の点効率を出すためには、できるだけ遊びのミープルを作らずに点効率の良い場所に投入していく必要があります。と同時に、高い点効率を出せるタイルや、安全性の高いタイルを引いたときのために、いつでも配置できる予備のミープルは確保しておきたいところです。

具体的には、最低1体、できれば2体のミープルを手元に残しておいて、手持ちミープルがゼロと言う状況は避けなければならないでしょう。1体しかいないミープルを投入するのは、投入したターンに即回収できる状況、または終局直前に限ってしまって良いと思います。


ミープルを置くときに

今置こうとしているミープルの価値(回収不能になるリスク)に、その手によって回収を見込めるスコアが見合っているかを現在の局面と照らし合わせて考えましょう。
もちろん、置くと同時に即回収できる場合はリスクゼロですから、この限りではありません。危険性とその価値判断については「一手の価値」と「危険に対する嗅覚を磨け」の項を合わせて読んでいただければと思います。

単純な算数とはいえ、ミープルの価値や一手の価値を具体的にハッキリと数字を把握するところまでいくにはコンピューター並の計算能力が必要かもしれませんが、大事なのは前述のような「今ミープルいっぱいいるからある程度気軽に置いても大丈夫」「手持ち少なくなってきたから一旦回収に専念しよう」といった一瞬の感覚的な判断が、合理的に計算した結果と遠くならないように感覚を磨くことだと思います。

タイルの受けを広くし、発展性のある草原や都市など、美味しい地形で相手の先手を取るために盤上にはなるべくミープルを先置きしておきたい。しかし盤上にミープルを置くことは殺される危険も伴うし、手元に最低限のミープルを残しておく必要もある。このへんのアンビバレントなミープル管理はカルカソンヌの最大のポイントではないかと個人的に考えています。

私見ですが、ミープル7体というのはすごく、すごーーーーく絶妙な設定だと思います。
注意が必要なタイル
修道院・3辺都市・4辺都市、これらのタイルは地形の完成に多くの手数を要するためミープルを置く時はよく考える必要があります。







街は見た目の印象で一見点数的に大きそうに見えますが、タイル1枚あたりの点数は他の街タイルと変わらないので、完成まで手数が多くかかるデメリットが目立ち、自分で都市を構築する上では使いづらいタイルです。捨てるか相手の完成を妨害するのに使うことも多いでしょう。ただし紋章付きは腐っても二点になるので、相手の街につなげて完成を遠ざける使い方には注意が必要です。

あいのり狙いの時は繋げられる都市辺が多いため接続に使いやすいタイルと言えます。しかしやはり都市の完成は遠くなる傾向にありますので、ミープル数を気にしなくていい(その都市を未完で放置しても戦える)ケースでのみ使うべきでしょう。

捨てる時は、既に捨ててある街タイルにあまりくっつけない方が良いと思います(手付かずの大きな未完成街は終盤に大きな得点源となる可能性があり、自分が確実に取れるなら良いですが、そうとは言えないので不確定要素が増えます。一発逆転を狙わないと勝てないような形勢になりそうであれば、そもそもこれらのタイルを自分で使って大都市完成チャンスにかけたほうが話が早いと思います)

修道院はもともと周りに埋まっているタイルが多くてミープルの回収がすぐに見込める状況や、埋める必要のある場所が他の地形の構築と一石二鳥であれば点効率も悪くありませんが、仮に単体の修道院完成のために自分でたくさん手数をかける必要があったり、周囲の破壊によって回収不能になればミープル1体の詰みに対して発展性のない最大8点は大きいとは言えません。こちらも場合によって捨てたり、妨害の足がかりにする方が有効なことがあります。最終盤、ミープル数に余裕がある状況で引いてきた場合は回収を考えなくても良いので5点程度の地形でもミープルを置いて点数の底上げにできます。
形勢判断
見た目の点数だけではリードは判断できない

一局のある時点でリードしているかしていないかを判断するには、既にカウントされている得点と盤上のミープルが配置されている地形の点数を合計します。そしてどちらかに行動不能(詰み状態または草原に寝かせている)、あるいは回収困難なミープルがいる場合はその分を差し引いて考えるべきかと思います。ミープルの数が相対的に多いプレイヤーにその時点でのミープルの価値分(中盤で10点、終盤で6点程度と思います)上乗せして考えると良いと思います。

「回収困難なミープル」と書きましたが、あるミープルの回収率を判断するには、残りタイルの把握も自然と必要になってくると思います。(もっともそこまで厳密に何点差とか把握する意味があるかと言われると疑問ですが)

ジリジリした展開でお互いに手持ちミープルが多く、ミープル不足になりそうにない局面であれば、相対的にミープルの価値は下がるので、加算済み+盤上の点数の合計だけで判断しても構わないかと思います。

また、都市には完成ボーナスという特殊な事情があるので、未完成点をカウントするだけでなく、完成する確率をざっくりでも考慮して期待値計算することで、その都市が潜在的に持っている価値(本当のスコアとも言えます)を出し、より実際的な形勢判断を行うことができます。詳しくは「一手の価値」の項で。


どんな時に形勢判断が必要か?

囲碁や麻雀でも同じ事が言えますが、形勢判断をするのは打ち方の方針に迷って今後の指標が欲しい時です。リードしている時は無難に、負けている時は逆転狙いで成功したときの点数の振れ幅がデカい手(草原や大都市乗っ取りなど)を狙う、といったように打ち方を変えないスタイルであれば形勢判断をする意味は特にないかと思います。
草原の支配権
どのタイミングで草原にミープルを寝かせるか?

上記「ミープルの価値」の項目と大きく関連しますが、草原を取りに行くためにミープルを寝かせるタイミングがいつかというのは非常に微妙で難しい問題です。
上級者の攻略記事などいくつか読ませてもらっていただいたところ、一般的にはその草原に都市が2つ完成し、3つ目に手を付けているか、完成しそうというタイミングが良いと言われているようです。

筆者なりに解釈すると、その草原が現在もっている点数と未来の発展性(9点あるいは12点以上になりそう)が現在のミープル1体の価値と釣り合った瞬間がミープルを寝かせるベストなタイミングということになります。プレイヤーのどちらかに既に寝かせているミープルや「詰み」ミープルがあってミープル一体あたりの価値が上がっている状況では、「健全な」盤面に比べて草原投入のベストなタイミングは遅くなると考えられます。「詰み」によって完成しない地形は、高い頻度で都市である(すなわちその都市から草原ボーナスは得られない)などの事情も考慮しましょう。

手持ちミープルが少ない状況で、早い段階から草原の支配権争いに夢中になりすぎると、高い頻度で中盤以降ミープル不足に陥り、結果受けが狭くなって取れる選択肢が減り、草原以外のポイント差によって負けます。

余談ですが、相手がミープルを散らすタイプの打ち手で、同じ草原に相手の作りかけの街が2つ以上あるような局面では、その草原に自分がミープルを寝かせることで、「相手の街の完成と同時に自分も草原ポイントを得られる」という状況を作ることができ、相手にジレンマを迫りつつ相対的に相手の得点効率を下げることができます。この場合は多少早めに(都市の完成を待たずに)仕掛けても良いと思います。


ミープル何体まで草原に割くか?

じゃあ結論として何体まで草原に寝かせるかということになりますが、「詰み」ミープルが居ない状況なら中盤(残りタイル36枚)までは多くても3体がギリギリではないかと思います。3体はぶっちゃけ置きすぎで、普通は2体まででしょう。ミープル1体あたりの総得点期待値は14点強という話でしたから、中盤にミープルの価値が1体あたり10点程度まで下がっているとしても、3体のミープルを草原に置くということは、そのまま終局を想定した場合、草原での加点に30点の期待値がなければ釣り合わないということになります。

勘違いしやすいですが期待値30点の手というのは「うまくいったときに30点もらえる手」という意味ではありません。仮に「そのままなら30点入るが、あいのりされれば相手にも30点(相対的に0点)で、あいのりされる確率が50%ある」場合、期待値は15点です。(この例では簡略化のため乗っ取りについては考えない)

ちゃんと点数が入るなら良いですが、草原はムキになって支配権を取ろうとしてくるプレイヤーも多く、あいのりや乗っ取りにあえば丸損です。あいのり又は乗っ取りにあう可能性をものすごく雑に※半分と見積もっても、期待値の30点を満たすには60点以上の草原が必要ということになります。草原で60点増える勝負はほぼあり得ないと言って良いでしょうから、やはり3体は過投入です。

※例を挙げると、18点の草原を独占するためにミープルを2体使うと仮定した場合、それが乗っ取りで相手の1体を無効化しているならばミープル1体(1体は相手の1体と相殺)18点の手と言えますが、あいのりで終わった場合はお互いに0点、仮に相手が3体で乗っ取ってきたとしたら相手にミープル1体18点の手を打たせたということになります。タイル状況などにもよるのでそれぞれの確率は個別に計算するしかありませんが、筆者は草原の覇権争いに投入するミープルの価値が期待値と釣り合うケースはあまり多くないと予想しています。

かといって草原ミープルを全く投入しないのも考えものです。その場合は相手に最小限のミープルで草原を独占させ大きな点効率を稼ぐのを許すことになりますし、詰みも草原ミープルもなく7体全部動かせる状況というのはミープルを持て余しがち(つまり遊兵を作ることになる)です。つまり、ミープルの投入数と回収できるスコア期待値の見合う分岐点を探る、あるいは中盤以降もミープル数に最低限の余裕を持った(選択肢の多い)状態を保てるラインを守るということですが、そのための草原ミープルの最大ラインはやはり中盤では2体前後ではないかと思います。

また、あいのりや乗っ取りを狙うには手数を複数かけることになるため、序・中盤の草原争奪は先手を取ることが重要。取りに行くぞと見せて相手にミープルを過投入させることができれば、相手は手数もかけることになり、あとの展開が楽になるケースも多いです。

相手が3体以上のミープルを草原に投入してきた場合は、我も我もと草原の覇権争いを始める前に、一度冷静になって草原とそれ以外の地形の価値を見直しましょう。たぶん、ミープル数の多い自分の方が、その後の局面で草原よりも(都市などから)多くのスコアを回収できるはずです。

最終盤にさしかかりミープルの価値が下がった時は、積極的に余ったミープルを手付かずの草原に投入するか、あわよくばあいのりや乗っ取りを狙うことがスコア期待値的に最大の手になる場合も多いと思われます。


草原の考え方まとめ

草原は、一見大きな得点源だがミープル効率から考えるとハイリスクハイリターン。リードしている場合は無理に草原を取りに行くことはない(草原の覇権争いに乗った結果、それがイコール勝敗に直結する局面になってしまい、勝敗がタイル運頼みになってしまう)期待値的にはムキになって乗っ取り合いを起こすくらいなら冷静に引いて他でコツコツ稼ぐ方が良さそう。

草原のあいのり、乗っ取りは成功しない(泥沼化する)なら仕掛けるべきではない。自分・相手のミープル数と相談して、相手に草原争いに割くミープルが確実に足りないような局面なら、余裕をもって仕掛けることができます。

まとめると「素早く寝かせる。深追いしない」が王道と思われます。ミープル投入合戦になりそうな展開で、見切りをつけるなら早いタイミングで(じゃないとミープルを温存するメリットを活かすためのターンが足りなくなる)。
その手何点? - 一手の価値
この項目は検証中です

6手で道を6枚(6点)引いた場合、1手の価値は1点です。
周囲6マスが既に埋まっている場所に修道院とミープルを置き、残り2マスを自分で埋めた場合は3手で9点を得るので一手の価値は3点です。

といったように、基本的に一手の価値というのは得た点数/その地形にかけた手数で計算します。プレイするにあたってはできるだけこの得点/手数が高くなるようにミープルとタイルを配置していくことがすなわち高い得点効率を出すということであり、基本になります。

次に、相手が6手使って道を6枚引き、そこに自分があいのりをした場合を考えてみます。2手(ミープル設置と接続)で相手の6点を無効にしている(お互いに8点を得るプラマイゼロ)のであいのりに使った2手のそれぞれの一手の価値は3点ですが、さらに、相手の6手を無効にしています。(自分は相手が6手かけて道を作っていた間、他のところで得ができているはずで、その間相手は点数の入る手を打てなかったことになります)

相手の手数を無効にするということの価値は何点程度なのでしょうか。実際に相手の手を無効化した時に、相手が得ていたはずの得点と自分がその間(相手がその地形に手をかけている間)に得た得点を合計して手数で割るという方法で、事例ごとの手の価値は算出できます。ですが、これだと事例ごとにバラつきが激しく、また、実戦ではあいのり・乗っ取りを「仕掛ける前に」他の手と比較して方針決定するのだから、結果の数値はその時点で出しようがありません。

仕掛ける前にその仕掛けがどれくらいの価値になるか判断するには、簡略化した式でざっとの価値を判断します。1ゲームに得られる総スコアの平均値を、「ミープルの価値」項で述べた雑な統計データから100点と仮定します。2人戦の場合1ゲームにつき手数は先手が36手、後手が35手なので、単純に割って一手あたり2.7~2.8点ずつ取っていると考えて良いと思います。

この場合、前述の道の例のように相手の6手を無駄にさせたのであれば、無効にした点数(6点)+2.75*6(16.5点)でおおよそ22点強の手と考えることができ、「あいのり」をかける2手でそれを実現しているので一手の価値は11点強もあると考えられます。(ものすごく大雑把に言えば相手の一手を潰す手は3点弱の得点に相当すると考えます)

ただしこれは「成功した時」の価値であって、「あいのり」はうまくいかない場合もありますから、大雑把に成功率を見積もって期待値を計算する必要があります。相場としては6がけ~8がけ程度で見るのが良いと思います。さきほどの手ではおよそ一手8点程度と見るべきでしょうか。(大都市では乗っ取り合いに発展することも多いので成功率の楽観視は禁物です)

あちこち大雑把で誤差の多い数字になってしまうのは否めませんが、相手のかけた手数を無効にできる場合はスコアの見た目以上に大きな価値を持つということがこれで論証できたと思います。あいのり・乗っ取りに関してはミープル設置+接続で最低2手かかるものと計算し、成功率と併せて仕掛ける前に(他の手を選んだ場合との)損得を確認しておきましょう(ざっくりでもいいので)。

※もっと正確でサンプル数の多い統計データがあればさらに正確な数値が出せるはずですので、ここで述べている一手3点弱というのはあくまで参考値とお考えください。


特殊ケース - 街の場合

※この項目、囲碁の考え方が使えるなと思って執筆したものですが、書いてるうちに「囲碁の(ヨセで使う)期待値による目数計算は基本的に数値が変動しない囲碁には非常に使えるが、タイルと残りターン数で期待値が変動する(下がる)カルカソンヌには合ってないかもしれない」と思い始めました。
局面のある時点での盤面評価には恐らくかなり使える考え方ですが、常用するにはちょっとややこしすぎますね…力を入れてる項目ではありますが、読み飛ばして頂いても構いません。


6枚の街タイル(うち紋章付き3枚)を使って18点の都市を作った場合、設置に6ターンかかっているので平均すると1手3点。ただし、都市には完成ボーナスという特殊な事情があるため、最後の(完成させた)1手は他の5手よりも価値が高く、逆に言うと構築途中の手の価値が相対的に低い(ただし、1手1点という盤上の見かけよりは大きい)という考え方を筆者は取っています。その根拠を以下で説明します。

「ある未完成の都市の価値が今何点なのか?」は、その都市が完成する確率による期待値計算で判断します。具体的には、今5タイル(紋章付き3枚含で未完成点8点)で完成時18点になる未完成都市の価値は盤上の見かけである8点よりも高いと判断できる(計算するまでもなく、あと1手で10点伸びる可能性があるという点から見ても)。完成する確率は残りのターン数・開口部の危険度・タイル種別などから判断できる(ざっくりでも良い。実戦を詰むほど完成率は感覚的に予想できるようになります)

相手が妨害・破壊をかけてこず、最後の1枚をこちらが先に引いて都市を完成させる確率をどんぶり勘定で80%と仮定した場合、その未完成の都市が現在持っている価値は18 * 0.8 * 5/6(完成時の点数 * 完成確率 * 現在までの手数)と計算します。というわけで、盤面上は未完成点8点しかない都市ですが、期待値的には既に12点の価値があります。

そして、そこまでの5手の価値は平均(12 / 5)して一手2.4点(8 / 5 = 1.6点ではない)、完成時の一手は12点を18点にする手ですから6点の手です。ポイントは、最後の一手が「未完成点8点を18点にしたから10点の手」ではないという点です。

王銘エン(囲碁九段)先生の言葉をちょっと借用してカルカソンヌ風に言うと、ここで重要なのは「8点の未完成都市を12点とみなす」のではなく、現時点でこの場所は正真正銘12点の都市である(例えば、6枚の紋章なしタイルで都市を完成させたのと同じことである)ということです。見かけ上8点なのに何言ってんだって思われるかもしれませんが…。

有効タイルの減少(消費)すなわちターンの進行によって未完成都市の価値は下がっていきます(完成確率の減少=期待値減少です)から、普通は都市の完成を優先させて構わないケースがほとんどと思いますが、厳密に言えば仮にこの時に「都市完成の一手」と「相手の完成間近な6点の道にあいのりする手」を天秤にかけた場合、都市の完成(8点→18点)よりも見かけの点数は低いですが、あいのりの手が優先されると思います。例の6点道へのあいのりは、上の方で述べたように相手の手数を無効にする価値も含めると期待値的に一手8点程度の価値を持ち、序・中盤であればこの都市完成の手より実際の価値が高いと考えられるためです。

このように、序・中盤の都市構築においては構築過程の手が見かけより大きく、完成させる手が見かけよりも小さいと考えます。そして、ミープルの価値が序盤に大きいのと同様、都市の構築も見かけ上の点数と実際の価値の乖離が序盤ほど大きくなります。(残りタイルが多い状況ほどその都市を完成させる確率が高いため)

このことは実戦をやってみると再終盤に未完成都市にタイルを追加してもほぼ1点増加にしかならないことなどから実戦経験的・感覚的にわかっていただけると思います。終盤(都市の完成率が低い状況)であれば、都市を完成させる手が見かけどおりの価値に近づくので、タイルを引けたなら優先して完成させます。

※上にも書きましたが、このような計算方法は、期待値の変動するカルカソンヌで常用するには少しややこしすぎるフシがあります。しかし、一局のある場面(上記の、完成かあいのりかといった)で判断に迷った時、盤面評価に使うには有効な考え方と思います。特に序・中盤において。


ざっくりとした結論

  • あいのり、のっとりはその地形の見た目のスコア以上に、相手が手数をかけているほど大きな効果を持つ

  • 相手の都市の完成を妨げる妨害・破壊は、相手の都市の価値、言い換えると点数期待値を大きく下げ、同時にミープルの回転率的にも優位に立てる(つまり自分にとって大きなプラス)

  • 期待値計算的な発想、厳密な数字は計算できなくても、感覚的に大小の比較ができれば良い

  • 終盤に近づくほど点数・一手の価値は「見たまんま」に近づくので、期待値計算の重要性は下がる

  • 参考として、二人戦の場合、1枚以上残っているタイルをいつか引ける確率は必ず50%以上ある
危険への嗅覚 - 詰みの形
いままでの項目で述べたようにミープルを行動不能にされることは、ゲーム序盤ほど大きな損害となります。大前提として、もともと危険な形になる場所にはミープルを置かないこと。自分がミープルを置いている街・道・修道院の周辺に相手が不自然にタイルを置いてきた場合は、妨害狙いか、同時にこれらの(詰みになる)形をつくる「破壊」の足がかりにする狙いと考え、早めに地形を完成させるか防御になるタイルを置くといった対策を打つ必要があります。

基本的に、「破壊」は「妨害」の延長にあると考えて間違いありません。タイルの種類・数を把握する前でも、以下の形は是が非でも覚えておき、危険な形に対する嗅覚を研ぎ澄ませておきましょう。

拡張コンテンツの「冬」などでは基本ルールに無い形のタイルが追加されており、詰みにならない地形もあります。しかしこのガイドはクラシックルールを想定しているので触れません。


残りタイルに関わらず詰む形

以下の形は対応するタイルが存在しないため、残りのタイル種別に関わらず詰みます。覚えましょう。

2辺草原 街・道1辺

道の出る方向が街から見て3方向いずれでもアウト


2辺街 草原・道1辺


街2辺と道2辺が垂直交差する形

街2辺と道2辺は、それぞれが90度の配置になっている場合(道が曲がって出ていく形)は対応するタイルがあるが垂直交差する形はアウト


開口部に対する妨害のアプローチ一例

参考図
画面一番右に向かい合いタイプの2辺都市タイルを設置し、右側にミープルを置いたところです。
一見左の方がすでに街タイルが一つありスコア的には得ですが、仮にそちらにミープルを置いた場合、次にその上のタイルに(直線、カーブなどのタイルで)道を左向きに置かれると開口部が極端に制限(3枚しかない一片都市+左折カーブのタイル)されます。相手がさらに畳み掛けてくれば最速3手でその都市は「詰み」になります。







一番安全な状態→隣に1枚タイルが来た状態(危険度1)


開口部の隣にタイルが1枚(妨害が成立している)→強力な妨害
元のタイルの両隣にタイルを置く前に、危険度1状態から開口部の隣にいきなりタイルを置いて取り急ぎ妨害にする手もよく使います。


強妨害状態から2手で詰みます。


この項目には以下のブログ記事を参考にさせていただきました。より詳しく知りたい方は必読。特に対応策(防御)については一番上の記事、攻撃側の手順や仕掛けやすい形などについては二番目の記事がオススメです。
PLAY SPACE a-frag カルカソンヌ戦略・戦術【初級者⇨中級者になる為に】[play-space-a-frag.hatenablog.com]

サカタ@カナダの雑文書庫 カルカソンヌ破壊戦法の解析(2016年簡易改訂版)[tomosakata.blogspot.com]

カルカソンヌ道 破壊[carcassonne.hatenablog.com]
具体的にどう打つか
序盤
(20手くらいまででしょうか)

主に一片都市などの小規模の街タイルを中心にミープルを配置して細かく点数を稼いでいくのが良いと思います。最序盤に修道院を引いた場合、周りが6タイル程度以上埋まっている(あと2手で完成)程度ならミープルを置いても構いませんが、そうでない場合はミープルの回転率が重くなるため、妨害に使うか捨ててしまうのをオススメします。

一片都市を設置する時の注意としては、なるべく開口部は外側に向けるということを意識します。「危険への嗅覚」項で書いたとおり、基本的には開口部の周りにタイルが多いほどキツい妨害や最悪破壊が飛んでくると考えるべきです。一片都市タイルの設置に限らず、道・街の開口部は外に一枚だけ突き出している形が最も安全です。

逆に、序盤の三辺都市など使いにくいタイルを引いて捨てたいが相手にも使わせたくない時は、既に地形タイルのある場所の近くに開口部を向けるなどして、妨害のしやすい形にしておくと相手に有効利用されるリスクを減らせます。

「完成させたい地形は外向き」「完成させたくない地形は内向き」です。

序盤は多少の得点差は気にせず、安全な形、受けの広く(使えるタイル種別が多く)なる形でミープルを配置していったほうが結果的にミープルの回収機会が増え、スコアも伸びます。「ミープルの価値」ですでに述べたように序盤はミープル一体あたりの価値が大きいため、目先の数点の差のためにミープルをリスクに晒すよりもミープルの回収可能性を優先するほうが結果として期待値が高くなるためです。

また、ミープルに遊びを作らないため、危険度の低いミープルはそれほど回収を急がずできるだけ色々な形のタイルを受け入れられるようにミープルを散らすと良いです。

この「受けを広く」という意識は麻雀で言う「牌効率」に相当する考え方です。

1辺都市のタイルを引いた時、すでに1辺都市タイルに配置済みのミープルが居て回収できる時でも、配置が安全(突き出している形)であればもうひとつ別の場所に一片都市を設置するのは良い考えだと思います。仮に一片都市を即回収した場合、次のターンに直線2辺都市タイル(通称土管)などの好タイルを引いた時に活かせないケースがあります。

土管

設置時の具体的な注意点などは「危険への嗅覚」の項を参照のこと。

道タイルを引いた場合は既に設置されている長い道があれば繋げても良いですが、基本的には道の点効率は高くないので、積極的に相手のミープルがいる街の開口部付近に置くなどして妨害に使うほうが概ね有効です。特にカーブは、道から繋げた場合は必ず隣にタイルがある状態になりますから(開口部の隣タイルへの足がかりが既に設置されている状態)妨害、破壊を受けやすく、ミープル設置には注意が必要です。

相手が不用意なミープル配置を行った場合は妨害・破壊を積極的に狙います(手数が少なくすむ場合は自分のミープル回収より相手の破壊を優先する方が有効に思えますので、街タイルもバンバン妨害・破壊に使います)。これも現状はミープルの価値が高いためです。相手が都市をどんどん広げたり道を伸ばすタイプの打ち手ならば、あいのりで相手の得点効率を下げるのも有効な手段です。

序盤・中盤の主な得点源は街です。

中盤
(残りタイル50枚~20枚くらいまでの間でしょうか)

基本的には序盤の延長です。完成した都市の数に応じてそろそろ草原にミープルを寝かせたりし始めるタイミングです。場合によってはあいのり・乗っ取りなども狙って、相手のスコアリングを抑えつつ自分はしっかり点数を稼ぐように立ち回ってください。すでに双方とも行動不能のミープルなども出ているかもしれません。

終盤に向けてミープル1体あたりの価値は下がってきているので、妨害・破壊に意識を向けていた場合はそろそろスコアに意識を戻しましょう。序盤に得たミープル数のアドバンテージも、ターンが残ってるうちに得点に活かさないと、間に合わなくなる可能性があります。

乗っ取り合戦などでお互いのミープルが少なくなった時、もし相手のミープルが0になったら、あいのり、乗っ取り中の地形の完成は先送りにして、小さくても交差点を道に繋ぐなど即ミープルを回収できる方法で細かくスコアを得るのが有効です。ミープル0の間は得点手段がないので、相手が自力回収するまで独壇場できます。逆に、自分がミープル0にしてしまうことは絶対にしないように。

終盤から終局

残りタイルが20枚を切ってきたらそろそろ終局に向けて最終的なミープルの身の振り方を考える必要があります。この時点で完成していない都市で、複数の開口部があるものは完成しない可能性も充分考えましょう。

当たり前のことですが盤面をしっかり見て1点でも点数の多くなる置き方を探します。残りのタイル種別をどれだけ把握できているかにもよりますが、特に残り10枚を切ったら、都市は完成しないものと考えたほうがいいです。

また、この時点で負けてる場合は実現確率は低くても全力で草原の乗っ取りなどに行かないと勝てません。

終局時に置くミープルが最後の一体になるように、草原・街(点数が大きいものなら未完でも。具体的には6点以上が目安か)・道(6点以上の草原・都市が残っていない時に、長い場所から)などにミープルを置いていきます。最後の一手でその時最も得点が高いポイントにミープルを置き、それが地形完成なら残りミープルが1、そうでない場合は残りゼロになるのが理想です。
1 Comments
Chrystchief Apr 17, 2020 @ 2:19pm 
I dont understand anything but this guide is pretty usefull.