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Posted: Jan 20, 2015 @ 6:18am
Updated: Jan 20, 2015 @ 6:49am

「I wanna be the Boshy」のクリエイターにより作られた非常に高難易度を誇る今作「Wings of Vi」

  • 人によってはこの「I wanna be ~」というシリーズには聞き覚えがあるのではないだろうか、I wanna シリーズの特徴は商業ベースのゲームではありえないほどの高難易度と豊富なネタ要素であり、特に難易度に関してはコアなアクションゲーマーを惹きつけシリーズが量産されるほどの人気を誇る。
    そんなシリーズの亜種である「I wanna be the Boshy」だが、明確なコンセプトがある、それは理不尽な即死トラップや完璧なタイミングでのジャンプといった繊細すぎる操作要求を極力減らした上でチャレンジングなアクションとして成立させるというものだ。この精神性は「Wings of Vi」と同じであり、アクションゲーム制作のスタンスとしてプレイヤーに対してとてもフェアだと言える。

    他にも様々過去の有名作からインスパイアを受けたとされており、そういったジャンルを指してこんな言葉を目にしたのだ。
    「マゾヒスティック レトロ プラットフォーマー」
    ふむ、マゾゲーという言葉がある、つまりマゾゲーマーが居るという事だ。確かにアクションゲームとは負荷を楽しむジャンルであるとも言える、負荷とは言い換えれば苦痛やストレスであり、チャレンジングな障害である。
    ここで言うSMの関係性で言うならばサドは製作者側でありサドが用意した苦痛にマゾであるプレイヤーは身悶えそれを楽しむというわけだ。しかしマゾが無意味な暴力に快感を覚えないように、そこに快感を見出すにはそれなりの文法が必要なのだ。

  • サデイィストには相手への愛が、マゾヒストには相手への信頼が必要なのである。

    そしてこの条件は、確かに今作の中に見出す事が出来る。
    一見無謀に思えるレベルデザインも繰り返し挑む事で見えてくる活路がある、それは苦痛に耐え続ける事へのご褒美といった甘さでプレイヤーを引き付ける言わばサディストの愛であり気遣いと言える、そして苦痛の先に見えてくる確かな攻略の糸口はサデイストたる製作者への信頼を生むのだ。
    ああ・・ またこんな無茶な事させてもちゃんとご褒美を用意してくれてるんでしょ?と。
    マップ構成からそれを攻略する手順を考え、一連の動作をなぞる指から思考が抜け落ちるほど馴染むに至って、やっとその難所を抜けた時、その気だるい疲労に包まれた達成感はどこか甘くエロティックでさえある。そして巧みに配置されたチェックポイントはプレイへの集中力を心地よく区切ってくれるのだ。ある意味で体感的なこの攻略手順を繰り返すがうちに、マゾが鞭打たれる自身の被虐性に酔う様に、プレイヤーも苦痛を乗り越える自身に酔い、更なる難所へと喜んで身を差し出すようになるだろう。そして倒錯的なこの難易度曲線はスタートからラストまで美しくエスカレートし続けるのだ。

  • 最近では勘違いされやすいが、Mの苦痛への欲望とは言い換えれば要求であり言ってみれば奉仕を受ける側なのである、つまりSとは相手の要求を感じ取りそれを相手に与えるという奉仕に根ざした行為への属性であって、単に暴力的な難易度をプレイヤーに押し付けるのは野蛮なだけの粗野な行為だ、それでは成立しない。SM行為には常に互いの同意に基づく相互性が必要なのだ。その点でも製作者は心得ている。3段階の難易度設定はプレイヤーの調教具合に合わせた細やかな調整がサディスティックな姿勢を崩す事なく成されており。あくまで前提としてプレイヤーへ与えられる物はアクションゲームにおける負荷でありSMにおける苦痛だが、そこには相手の要求に合わせた確かな気遣いを感じる事が出来るだろう。

  • しかしマゾ足るプレイヤーは常に貪欲である、サドの奉仕的な苦痛を貪り調教が進むにつれて身についたスキルは更なる苦痛への欲情を促がすかもしれない、知ってしまえば追求するのが人間の欲望という物だ。倒すだけで精一杯だったボスへのノーダメージ実績に始まり、即死モード、チェックポイント無しモード、高速モード、スピードランなど様々な各種オプションプレイがそういったプレイヤーには用意されている。

    多くのアクションゲームでは主人公に新たな能力を持たせる事によって踏破可能な障害を設定するが、今作では目に見えないプレイヤーの成長を常に計算した非常に職人的な調整がされており、キャラクターに授けられた便利なツールではなくプレイヤーの成長で培ったテクニックを持ってこそ障害を乗り越えていくという体験的な手応えは、アクションゲームとしての原初的な達成感と喜びを与えてくれるのだ、勿論そこにはプレイヤーのマゾ体質という資質も必要ではあるのだが。

  • 昨今アクションゲームに求めるられる事は何だろうか?ビデオゲームというビジネスの規模が肥大化した今では、あらゆるプレイヤー層を取り込む為に難易度は駄菓子のごとくソフトになり誰でも楽しくプレイ出来るのが前提だ、でも時々思わないだろうか、ゲームに徹底的に蹂躙されてみたいと。少なくとも自分はそうだ。難しいと言われるゲームをプレイしてそれが思ったほどでも無かった時に感じる欲求不満はどうだ。もっと徹底的にやって欲しいのだ、でもそこに愛が無いのは嫌なの。そんな倒錯的欲求を持った人がもしも他にもいるのならばサディスティックな愛に満ちた「WIngs of Vi」はあなたの理想的なパートナーと言えるだろう。
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3 Comments
gipsydog Jan 14, 2016 @ 2:00pm 
コメントありがとうございます、すごく私的なゲーム評ですので半ば自慰のつもりで書いたものですが評価してもらえて嬉しいです。:pug:

Rushさん@
コメントしてもらってるの今さら気づきました、一年近くも経ってるのにごめんなさい。:sadpug:
真夜中と言わず昼日向にも頭ひねって整理したんですよぉ。
ソンシ Jan 14, 2016 @ 6:19am 
素晴らしいレビューだ。感動した!!
Rush Feb 1, 2015 @ 5:25am 
真夜中に書いたレビューかな?